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寓話「狼」

2001/12/13 寓話「狼」

昔々、あるところに一匹の狼がいました。
狼は無用な殺生をしない動物ですが、嫌われ者でした。
ある日の事、いつものように「狩り」に出掛けましたが、
この日は運悪く人間に見つかり、手酷くやられてしまいました。

獲物にもありつけず、傷を負った狼は気が立っていました。
そこへ群れから逸れた一匹の子羊がやってきました。
子羊は狼を怖れる事も無く近づき、可哀想だと思ったのか
傷を癒すように舐め始めました。
狼は無邪気で可愛い子羊を食べる事が出来ませんでした。

狼と子羊は一緒に生活するようになり、
彼は子羊と同じ物を食べるようになりました。
「狩り」をすると子羊が悲しい顔をするのです。
ベジタリアンの狼なんて聞いた事が無いよ・・と
ぼやいていても満更でもない様子でした。

やがて子羊は成長して大人になり、群れに帰る事になりました。
羊は狼に言いました。「一緒に行きましょう」
狼は答えました。「こんな姿じゃ、みんなが怖がるから行けないよ」
「あなたは狼なんかじゃないんだから!」と羊は懇願しましたが
彼は一緒に行く事は出来ませんでした。
別れ際に羊は狼の古い傷痕を優しく慈しむ(いつくしむ)ように舐めて
群れに帰っていきました。

その後、狼はあの時の子羊の悲しそうな顔を忘れられなくて
「狩り」をしなくなりました。