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蒼い追憶

2001/12/13 フィクション01 「蒼い追憶」

冬のある晴れた休日、
風も無く穏やかな陽気だったので、久しぶりに洗車した。
水飛沫を浴びた愛車の青いボディーが眩しく映る。
良い色・・・と私は心底そう思った。私は青が好きです。
(私は蒼が好き・・・)
!、ふっと私はおもむろにダッシュボードの奥を捜し始めた。古いカセットテープを・・・

(青白い灯りに照らされた公園のベンチ、彼女は缶コーヒーで手を温めながら‘私は青が好き’と言い
ゴルフⅡを指差して‘赤が好きなの?’と言葉を続けた。
私は、‘燃えるような赤が好き、僕は情熱家なんだ’と答えた。
絵画好きな彼女は画家に例えて、青はビュフェで燃えるような赤はゴッホだと言った。)


稲垣のカセットテープ、聴くつもりも無いのに、ダッシュボードの中に入れてある自分が可笑しく思える。
デッキのスイッチをONにすると懐かしい曲が流れ、心の片隅の断片的な記憶が泡のように浮んでは消える。

(ゴルフⅡの中では古いロック&ソウルの曲ばかりで彼女はウンザリしていた。
ある夜、彼女は数枚のLPレコードを持ってきた。家に帰ったら聴いてくれと言う。
‘イナガキ?僕、和物は聴かないよ’と、相手にしない私に‘絶対に好きになる!’と彼女は魔法を掛けた。)


「古い歌を聴いているのね」と、いつのまにか、そばに居たカミさんの声に我に返る。
そうだね・・・はるか遠い過去の詩(うた)、蒼過ぎて眩しい追憶・・・

私は無性にビュフェの絵が恋しくなった。


(追記)
先日洗車したとき、トランクの片隅にあった紙袋の中にカセットテープが3本入っていました。Aちゃん、稲潤さん、ユーミン。
本人も忘れていました。
今の車ではカセットを聴いた事が無かったので、洗車しながら、稲潤さんを聴いていたら
つい取留めの無い事を考えてしまい、こんな創作文を想いつきました。

「青はビュフェで赤はゴッホよ」なんて言える女性が居たら最高!ですよね。
私はゴッホの絵が好きなんです。
ビュフェの青は、蒼い追憶と車のボディーカラーに絡めました。

「古いロック&ソウルの曲」は実際にはオージェイズ、カーリーサイモン、E,W&Fとかジャンル関係無く聴いていました。
「蒼い追憶」は稲潤さんの現実に存在する歌です。男の切なさを歌っています。
文中の「カミさん」は夢想家の私をいつも現実に戻してくれる聖母です。

稲潤さんの歌の世界をかなり意識して創作しました。
「サンタナ」特集より「稲垣潤一」特集の方が良かったかもしれませんね。

Ps こうして書いているうちに本当にビュフェの絵を観たくなりました。

  • 2001年12月13日(木)20時46分

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