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ミラージュ

2001/12/13 フィクション02 「ミラージュ」

今日は結婚記念日。昨日は箱根に一泊して
帰路、10何年ぶりにベルナール・ビュフェ美術館を訪れた。
誘ったのは私。
私の「久しぶり・・・」と何気無く呟いた言葉に
カミさんは腕を絡ませながら
「あら?私、初めてよ。誰と来たの?」と茶化すように言った。
私は、はにかみながら「旧友とさ」心の中で答える。

私はビュフェの絵が好きだ。冷たい寒々としたタッチの中に
仄かに温かみを感じてしまう。
以前、夫人(アナベル)を描いた絵を観た事あるが無機質な風情の中に彼の愛情を感じた。
アナベルは知的な人。


(彼女は髪形を整えながらビュフェが好きと言い、私はゴッホが好きだと、咥えタバコで言った。
じゃあ、ゴッホの画集をプレゼントしてあげるからビュフェの絵を観に連れてって、とせがんだ。
ベルナール・ビュフェの何処が好きなんだい?・・・)


彼は人間嫌いなのだろうか?
本当は人間が好きで、人間に対しての理想が強すぎて
また、大戦という不条理に絶望し現実の人間に幻滅したのだろうか?
彼は純粋過ぎたのだと思う。

ビュフェ美術館を出た後、二人で少し散策した。
冬の冷たい空気が頬を刺すが気持ちが良い。
歩きながら、カミさんは私の他愛も無い冗談に付き合ってくれる。
バイクが2台止まっていた。
過去の時間と現実の空間が交錯する。
バイクで来ている男女の二人連れ。
彼女・・・


(彼女はバイクに乗りたい!と言い出した。アブナイから、と
私は猛反対したが結局押し切られた。
彼女が免許を取った後、私達はよく2台で出掛けた。
絵が好きな女性だった。「また、ここに来れるかな・・・」彼女は物憂気に呟いた。
ビュフェの何処が好きなんだい?・・・)


心のセピア色した情景に絵の具が落ちた。
おぼろげな彼女の顔に妻の笑顔が重なる。

彼女は・・・まぼろし


(追記)
12月10日は私達の結婚記念日でした。土、日で出掛けたかったのですが宿の予約が取れず
日、月曜日になってしまいました。
箱根は好きな場所の一つです。

カミさんはビュフェの絵を観るのは初めてで、不評でした。
荒涼とした画風ですから無理無いかな。
おおらかな人なんですが、以前、プラレタリウムを観に誘った時に
彼女、イビキをかいて寝てしまいました。
ん~もぅ・・・って感じでした(笑)。

「彼女は髪形を整えながら・・・」は車の中から夜景を観ている
シチュエーションをイメージしました。

「ゴッホの画集をあげるから・・・」こんな事を言える女性が本当に居たら私は
「ヒラリと身を投げあなたとエスケイプ」です。

女性にバイクの運転を教えるなんて、バイク乗りの私には憧れでした。