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彼女からの年賀状(恋文)

2003年02月01日 フィクション05 「彼女からの年賀状(恋文)」

2003年元日、穏やかな年明けを迎えたM氏は一枚の年賀状を待っていた
普段会う事が無くなった旧友たち、会社関係とか親戚からでもない
それは一年に一度だけの愛しい便りだった。

別れてから10年以上経つけど彼女は毎年欠かさず年賀状を送ってくれる
M氏も下手な筆で彼女に年賀状を書いている
彼女はいつも2行程度の文を書き添えてくれるからそれを読むのが楽しみだった。
彼女が結婚する時に一度会ったがそれ以来8年顔を見ていない
そして6年前からは子供の写真附き年賀状になった
下の子は旦那さんに似ている、M氏は上の子の方が可愛いと思った。

そう言えば付き合っている頃デートの帰り際によく手紙をもらった。
受け取っても安易に机の引出しの中にも入れておくことが出来なかったし
そうかと言って簡単に破って捨てることも出来ず神経を使った思い出がある。

気持ちを無防備にして受け取る事が出来たのはメモ用紙とか手帳の一片
レポート用紙に書かれていた事柄、ああしたい・こうしたいとか会社の上司の悪口
同僚の噂話等他愛も無い話。綺麗な字の持ち主だったけど詩は書かなかった。

少しだけ心の負担を感じたのは封印されていない封筒に入っていたレポート用紙の手紙
前夜便箋に書いてみたけど内容に迷い職場で読み返すつもりで封をしなかった
結局、便箋は破棄してレポート用紙に何の変哲も無い内容の手紙を書いたと思っている。

一番恐かったのは封印された封筒に入っていた手紙だった
これは夜中に自分の心を赤裸々に描いたものだから内容はある程度想像出来たけど
鬼が出るか蛇が出るのか胸をドキドキさせながら封を解いた。

研ぎ澄まされた感性の時代を思い出させてくれる彼女からの年賀状が今年も来た
相変わらず子供達の写真附き年賀状、年毎にワンパクになっているのが微笑ましい
でも彼女が現在どんな容姿なのか解らないからM氏は少し不満を感じていた。

たった1行の自筆は「・・・毎日がにぎやかに過ぎて行きます」と書かれていた
M氏は安堵した、どうやら去年も彼女は幸せだったようだと
1行だけでもいいよ、年賀状を送ってくれる事が幸せの証しだと思うから。

M氏は手帳に入れてある妻の写真の裏から1枚の写真を取り出した
15年前の彼女のポージングして微笑んでいる写真、もう色褪せているけど。
現在の彼女もこの写真と同じような微笑んだ表情だと心底思いたい。

彼女がどのような気持ちでM氏に年賀状を書いているのか、いつまで送ってくれるのか
解らないけど、M氏自身はlove letterのつもりで年賀状を送っている
色褪せた彼女の写真と翳りゆく想い出に・・・今年も宜しく