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夢・・・迷路     (A far old inspiration)

2003年12月07日更新 フィクション07 「夢・・・迷路」     A far old inspiration

ある日、私は迷路に墜ちた。
そこは魔物が棲む 色の無い世界。
悪魔が 神の仮面を被り 微笑む。
耳障りの良い言葉だけが心に響き、全てが偽物で全てが本物に見える。

蛇どもがあちらこちらで 迷路の地図を売っている。
「こっちが本物だよ、出口への近道の地図だよ」と口々に言っている。
私は人々が群がるのを見た。
ある者は自分の身体を捧げ、肉親を差し出し、ある者は大金を捧げていた。

私は道に迷い、いつか 協会の前にいた。
説法だけが聞こえてくるけど 門は堅く閉ざされたままだった。
仕方が無く再び歩いた。

道沿いに一軒の館を見つけた そこは預言者の館だった。
中では預言者達がヒソヒソ話をしていた。
「予言は当てるものじゃない 当てに行くモノ」とか言って
手に手に斧とか松明を持っていた。
私は恐ろしくなってコソコソと逃げ出した。

途方に暮れた私に蛇が近づいた。
「出口への近道はこちらですよ」耳元で優しく囁いた。
私はフラフラとついて行った。他の蛇達も同じ事をやっているが
向かう方向は皆、別々だった。

途中、一人のみすぼらしい学者が道端で何か喋っていた。
彼は自分の研究論文を演説していた。
多くの人たちは見向きもせず 素通りして行ったが
私は何となく面白そうなので足を止めた。

「さあ早く行きましょう」と 蛇は急き立てたが
私は地べたに座り、学者の話を聞いた。
蛇は私のことは諦めて 他の人を連れて行った。

学者の話は数日続いたのか 数分で終ったのか 解らないが
話が終った時に 周囲がホンの少し 色付いているのが 解った。
彼は 「コンパス」をくれた、裏に「量子力学理論は未完成」と書いてあった。

「箱の中に小動物が1匹いるとするならば 君が猫だと思えばそれは猫、
犬だと思えばそれは犬になるように かくあるべき 故に ヒトとは混沌であり
不確実性である」と彼は言った。

突然ファンファーレが鳴り響いた。
蛇どもが タップダンスを踊りだし それを背景に
神の仮面を脱いだ悪魔が賛美歌を歌いながら やがて舞台の幕が降りた。
蛇どもに連れて行かれた人たちの カーテンコールが鳴り止まず、
緞帳が再び上がり、満面の笑みを浮かべた悪魔が挨拶を繰り返す。

舞台の袖から眺めていた私は 迷路の出口が 緞帳の裏側にあるのを 見つけた。