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絶対恐怖 Booth/ブース 2005年 日本

絶対恐怖 Booth/ブース「“嘘”その罪は、償わなければならない。」

[監督] 中村義洋
[出演] 佐藤隆太 , 小島聖 , 池内万作 , 芦川誠

勝又真吾(佐藤隆太)・・・・・・・・・・深夜ラジオ番組「東京ラブコレクション」の人気パーソナリティー。
馬淵美保子(小島聖)・・・・・・・・・・女子アナ。真吾が婚約者から略奪したあげくボロ切れのように捨てた女性。
番組のディレクター(池内万作)・・・私的には「金田一少年の事件簿(堂本剛)」の明智警視役が印象深いです。

主演の佐藤隆太さんを初めて見たのはTVドラマ「プライド」でした。憎めないキャラで好青年の印象でしたが、この作品では傲慢で自己中な男の役を演じています。
脳ミソに植えつけられた彼のイメージとギャップを感じましたが、物語の進行と共に違和感が薄れていきました、軽薄なところが良いです。

惜しいかな最後では締めくくりを急ぎ過ぎていると思います。主人公の結末も、「あんなふうに、いや、こんなふうに、なるんじゃないかな?」と
私だって2、3つ推測した中で当たっていましたから、すぐに解った人は結構いたのではないでしょうか。
でも、本当はそんな事どうでもよく、ストーリーで一番重要なのは最後のオチに至るまでのプロセスと描写だと思います。
だから、そこのところのディテールをしっかり創り込んで頂ければこの映画最高なんですが、ちょっとばかり霊の描写には納得しかねます。

マイナス面を強調してしまいましたが私はこの映画好きです。舞台設定が良いのか筋書きが良いのか判りませんけど‘あっ!この映画良いな~’と思わせるオーラの存在を感じてしまいました。
血ドバも無いし、佐藤隆太さんのキャラのせいか笑えるところもありますからホラーが苦手な人でも安心して鑑賞できますし、2度3度見ても面白いですから御奨めの作品です。派手ではありませんが「良いもん見っけた!」って感じです。

収録時間73分中の大半が、地下4階にあるという設定の第6スタジオとそのブース…つまりラジオ局のDJブース内での描写です。
映画の初っ端は開局当時の昔に、そのブース内で起こった男性アナウンサー怪死事件についてのくだりです。これからメイン舞台になるこの古くて狭いスペースが‘ここはいわく憑きなんだよ、呪われているんだよ’と、私たち観ている者に示しています。それからいよいよ現代のお話になります。

夜の都会を真っ赤なアルファロメオが疾走する。運転しているのは深夜ラジオ番組「東京ラブコレクション」の人気パーソナリティー勝又真吾(佐藤隆太)だ。
ラフな運転は遅刻寸前で焦っているせいなのか、それとも、この人物の性格なんだろうか?。そして、右手を怪我しているようでテーピングをしている。
車から降りた後、真吾の表情としぐさからも平常ではない精神状態が推測できます。

その上、この日はラジオ局の都合で急遽、‘いわく憑き’のブースで放送する事になっていた。地下4階の第6スタジオへ連れて行かれて、いつもと勝手が違う状況に苛立ちが増すばかり、そして真吾が昔のアナウンサー怪死事件を知ったのは番組が始まってからの事だった。
午前零時、いつものように「東京ラブコレクション」は軽いノリでスタートした。今夜の電話相談のテーマは‘許せない一言’、リスナーの恋愛相談が始まった。
最初の少女の相談を相手にしている時に雑音と共に真吾を小馬鹿にするような女の不気味な笑い、そして「ウソツキ」と囁く…混線なのか、心霊現象なのか…

その後、リスナーから寄せられた‘許せない一言’が、ことごとく自分の場合にも当てはまってしまうし、番組もスムーズに進行しないからナーバスになっていく真吾がいます。んーーこの人、性悪なんですね~~‘許せない一言’…傲慢な彼には多過ぎたようです。
そして、美保子(小島聖)が自分に浴びせた「嘘つき。嘘ばっかりついて…」という言葉を思い出した。この真吾には何か裏事情があるようだ…
怪死した男アナの亡霊なのか、誰かが自分を陥れようとしているのか、周りのスタッフに疑心暗鬼を生じ、猜疑心からしだいに己自身を堕としていきます。

わぁー!もうこれ以上は書けませぬ!!!勘弁して下さい。
この後、主人公の主観的な心理描写と客観的な描写が交錯して、結構スリリングに展開していきます、ここ巧いです。
私なんか、途中で作り手の意図するワナにまんまとハマってしまい、「ぁちゃー…そーゆー事だったの…」と苦笑いして、やられたって感じでした。

人間は生きている限り、多少なりとも嘘をつくし、悪気が有ろうが無かろうが、言葉で他人を傷つけた事が無い人なんていやしません。
‘許せない一言’…この映画の主人公のような目に遭うのは、私たちにも平等にあるんじゃないかと思った次第です。

しかし、真っ赤なアルファロメオ…この映画のはアルファGTだと思うけど、良いな… ←Audi乗りの私には‘許せない一言’かもしれん。

[記事の編集履歴]
2016年12月25日 題名、改行など細かなところを修正。

  • 2006年09月02日(土)19時10分

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