Sレンジは感激ものです、通常はDレンジへ入れっ放し走行でも充分過ぎますが、Sレンジに入れるとエンジン特性の美味しいところが前面に押し出され、さらに凄い事になります、V型6気筒 3.2リッターエンジンのトルクがモリモリと言ったところでしょうか。それに伴い排気音が野性に目覚めたかのようにガラリと一変し、それは‘ジキル博士とハイド氏’と言うには大袈裟過ぎますが性格が豹変すると言ってもあながち間違ってはいないと思います。
ATモードのお任せ運転とは言えSレンジは充分にレーサー気分を味わえる事が可能です。臨戦態勢を常に維持しているかのようにアクセル操作の一挙一動に敏感に反応する性格は今まで体験した事が無い好戦的な印象です。また、アクセルON状態からOFF、そしてブレーキングすると、‘ブゥォン!!ブォォゥン~~’と、なんとこいつは自動的にブリッピング(エンジンの回転数を合わせる事)してくれてシフトダウンが完了します。初めの頃は感激のあまり鳥肌がたってしまいました、涙もんですよ、ホントに。
飛ばし屋さん達が泣いて喜びそうな機能にローンチ・コントロールプログラムがあります。これはサーキット走行とかシグナルGPで勝負する為の‘発進モード’です。使い方は[1]ESP(エレクトロニック・スタビリゼーション・プログラム)のスイッチをオフにして、[2]Sレンジかマニュアルモードにして、[3]左足でブレーキペダルを思いっきり踏み、[4]エンジン回転数3200rpmをキープして、[5]左足をブレーキペダルから離すと・・・発進時に最適な加速を得る事ができる(かっ飛んで行く)らしいです、紳士淑女の皆さんはこんな事を一般公道でやってはダメよ。
そうそう、それから気になったのはエンジンブレーキが普通のATより効きが悪いと思います、例えばDレンジで走行中(極普通のスピード)、ダラダラした下り坂で積極的にエンジンブレーキが欲しいと思った時にパドルでシフトダウンさせても自分が期待しているような減速は得られず初めの頃はその感覚差に戸惑いました。今では、そういう状況になった時にはSレンジへ突っ込んでやりますけど。
そうするとエンジンブレーキの効きは改善されますが、ただ、これには困った問題が生じます。上の方でも書きましたがSレンジに入れると、DSGは一般公道をサーキット場と勘違いしてしまい、自制心の問題になりますが、否が応でも気持ちが高揚し所構わず‘あなたはシューマッハです、最高です’と、ドライバーをそそのかしてきます。私のようなヘボドライバーは気をつけなければいけません、罠ですから。
ニューTTの(これから登場する他Audi車も同様)DSGは「Sトロニック デュアルクラッチ ギヤボックス」と名称変更されるそうです。他社のセミAT注には乗った事が無いので比較はできなくてもフォルクスワーゲン・アウディは凄いトランスミッションを作ったな、と感嘆しました。この変速機が装着されているだけで車選びでのポイントは非常に高く、噂通りの凄いやつだと思った次第です。虜になるのは必定なので、むやみにDSG搭載車なんかに試乗してはいけませぬ。
・・・冷静になって我を振り返れば、今までこんな風にクルマを熱く語った事は無かったと思うが、どうだろう?
注 【2009年08月22日追記 DSGについての記述補完】
メンテナンス&トラブルの「11、DSG (Sトロニック) のトラブル(不具合)」に続く